漫才 「ペンション殺人事件」

1年以上前に書いてたやつを微妙に変えました

漫才 「ペンション殺人事件」
 
A「○○○と申します。お願い致します。漫才頑張っていきましょう。」
B「コント、ペンション殺人事件」
A「心配しないでください、漫才ですよ。すみません意思疎通が取れてなくて。」
B「そんなに血相を変えてどうされました?」
A「続けるみたいです。えっと、あなたは?」
B「私、探偵でして。ひと月前にニュースで話題になった事件あったでしょ?あの事件を迷宮入りさせたのは私です。」
A「解決してくださいよ。」
B「捜査中に遺体を失くしてしまいまして。」
A「そんなことあります!?前代未聞ですよ?大問題じゃないですか。」
B「それより今はあなたの問題です。さっきから部屋の扉を叩いて、どうされました?」
A「実は…、親友のたかしが部屋から出てこなくて。朝起こそうと思ってさっきからドアを叩いてるんですが、返事がないんです。」
B「なんだって…!?ドンドンドン!親友のたかしさん!ドンドン!親友のたかしさん!ドンドン!返事をしてください!親友のたかし!」
A「親友を連呼するの止めてもらえます?恥ずかしいので。」
B「ダメだ…返事がない…。なんだか嫌な予感がします。この部屋の鍵穴は?」
A「鍵穴は固定なんでそこですけど。鍵はたかしが持ってるので、部屋の中には…。」
B「くっ!こうなったら手荒になりますが…、少し下がっていてください。」
A「助走をつけて…、まさか!部屋の扉を突き破る気では―」
B「(腕が扉を通り抜ける)」
A「腕が通り抜けてますね!?」
B「(内側から開ける)カチャッ!開きました。」
A「いや、どうやったんですか??ありえないことが起きてたんですけど??」
B「そんなことより、今はあちらを。」
A「なっ…!(倒れてるたかしに駆け寄る)たかし!たかし!!」
B「むね肉を、刃物で一突き…。」
A「たかし!しっかりしろ!たかし!!」
B「(腕時計を見て)時刻は?ダメだ…、ひと月前から動いてないんだった…。」
A「たかし!なんでなんだよ!!たかし!!」
B「くっ…!お涙頂戴の場面だ……!」
A「うるさいなあさっきから!ひと月前に壊した時計なんでつけてるんですか?いいからさっさと救急車を呼んでください!!」
B「いいえ、残念ではありますが、心臓の鼓動は止まっていますし、瞳孔は開孔、どうしようもないこの状況では、救急隊員も立ち往生!」
A「なんで韻踏んでるんですか?」
B「ここは、警察、葬儀屋、葬儀に出席するであろう親戚、あと葬儀にはお寿司が必要なので銀のさらに予約の連絡を。」
A「先を考えすぎでは!?くそっ!たかし…!どうしてたかしが殺されなきゃいけないんだ……!なんでなんだよ………!!たかし………!!」
B「バカ野郎っ!!パンッ!(Aの頬を殴る!)
A「痛っ!ええっ!?なんで!?」
B「いいですか!そうやって落ち込んでても、たかしさんは喜びませんよ!確かに…、気持ちが辛いのはわかります…。ですが!ここは犯人を突き止めて!この死を乗り越えないと!僕たちは!先に進めないんだ!!」
A「気持ちが前を向きすぎですって!ついさっきですよ遺体発見したの!」
B「とにかく、今はこの事件を解決できるよう捜査に協力してください。被害者は親友のたかしさん。死因はおそらく、ハツに刺さっているこの包丁でしょう。」
A「ハツって。あなたさっきもむね肉とか言ってましたけど、食料として見てません?」
B「何か手がかりとなるもの……、ハッ!遺体から流れている赤い液体、これは…、(ぺろっ)血!?」
A「一目瞭然でしょ。白い粉とかでやるんですよそういうのは。」
B「ぺろっ、ぺろぺろっ(床の血を舐める)」
A「舐め続けないで!止めて食欲!」
B「ですが、たかしさんの指のところを見てください。何か血で、文字みたいのが書かれています。」
A「ほんとだ…。これってもしかして、ダイイングメッセージ!?」
B「まあ今となってはほとんど読めませんが。」
A「ペロペロ舐めるから!何やってるんですか!」
B「そして、さらにもう一つ。この部屋の窓はすべて閉まっており、部屋のドアも私が入るまで鍵がかかっていました。出入りできそうな所は他にありません。」
A「え…?ということはまさか…。」
B「はい。実質殺人です。」
A「密室殺人です!殺人そのものですから。くそっ!せめて、いつ殺されたかだけでもわかれば…。」
B「それなら昨日の夜12時くらいだと思います。」
A「わかるんですか?」
B「はい。私、幼稚園くらいの時におじいちゃんを老衰で亡くしましてね。その時、布団に横たわるおじいちゃんの遺体を見てから、一目見ただけでその人がいつ死んだかがわかるようになったんです。」
A「全然よくわからないんですけど。それでいくと幼少期に家族亡くした人みんなわかることになりますよ?」
B「では、まずはその時間にアリバイがなかったか、この部屋にいる一人ずつに聞いていきましょう。さっそくあなたから。」
A「一人ずつって、今僕しかいないんですけど。」
B「特にあなたは念入りに聞かないと。こういう時、一番怪しいのは第一発見者だ、って言いますからね。」
A「一応言っときますけど、あなたもですからね?」
B「では、さっそくお聞きします。昨日の晩ごはんは何を?」
A「何してたかを聞けよ。脳トレなのこれ?『昨日の晩は何を』!」
B「失礼、昨日の晩は何を?」
A「昨日は、たかしと晩ごはんを一緒に食べてて、夜10時くらいには部屋に戻りましたよ。そのあと昨日は疲れてしまって、すぐに部屋で寝てしまいました。」
B「なるほど。それを証明する印鑑は?」
A「ねえよそんなの!ですが部屋には妻もいましたし一緒に寝ていたので、証人はいますよ?」
B「ちなみに?奥さんは今どこに?」
A「具合が悪いらしくて、今もベッドの上で寝ています。」
B「なるほど。つまり整理をすると、たかしさんの命が失われていく中、あなた達は新しい命を作っていた。そういうことですね?」
A「違います。なんか寝てるの意味を歪曲してません?」
B「まあそれも奥さんに聞けばわかることです。いっても奥さんの上の口は、正直ですからね。」
A「はっ倒すぞ。なんなんだお前?」
B「ちなみに私はその時間ずっとロビーで一人くつろいでいました。」
A「アリバイないじゃないですか!」
B「それを証明する印鑑です。」
A「わざわざ意味のない証明をどうも。ですが、こうなるとペンションにいる人全員に聞いていかないといけないですね。」
B「いいえ、犯人はもうわかっています。」
A「早っ!?ええ??今ので??」
B「はい。あなたの親友であるたかしさんを殺した犯人…。それは、床(とこ)の中にいる!」
A「『この中にいる』!床の中って…。まさかあなた、寝ている妻を疑ってるんじゃ…?」
B「その通りです。」
A「ふざけるな!そんなわけないでしょ!」
B「ちょっと落ち着いてください!」
A「落ち着けるわけないでしょ!妻を疑われて!なぜなんですか!?一体何を根拠にそんなこと言ってるんですか!?」
B「…実は昨日の夜中、顔色が悪い奥さんがロビーに来ましてね、話を聞いたら、自分から殺したと言っていました。」
A「確定じゃねえか!え、なんなのそれ??」
B「だから言ったでしょ。奥さんの上の口は正直だと。」
A「あれそういう意味だったんですか?」
B「これで無事に事件は解決しました。」
A「さっきまでの捜査は何だったんですか?茶番??」
B「ですがまだ一つだけ、私にも解けてない謎があります。」
A「もともと解けてましたけど…。でも確かにそうですね。」
B「一体なぜ、奥さんはあなたの親友であるたかしさんを殺したのか…。その動機が―」
A「密室のトリックは!!!!??」
B「…はい?」
A「密室は!!どうやって!!!なぜ!?わざわざ!!密室を作り上げたのに!!!うちの妻は!!あっさり!!自供しちゃったの!!!???」
B「ああ、あの密室は私がやりました。」
A「…は?」
B「ほら、さっき腕が通り抜けてたじゃないですか。あれを使って、私があの部屋を密室に作り上げたんです。」
A「…え?ごめん?なんで??」
B「さあ!ここで探偵である私からあなたに一つ謎をお渡ししましょう!!一体なぜ!私が!そんな事件をかく乱することを!急に!しでかしたのでしょおおおか!?」
A「いきなりどうしたんですか!?」
B「わっかるかなああああ!??わからないでしょおおおおお!?」
A「なにこいつ!人殺しより怖い…!まさか…、うちの妻が美人だったから、それで助けて少しでも気を引こうと!」
B「はあ?うっせえ!黙れよブス女!!」                      
A「こいつ、いない人の悪口を平気で…!やめろ!妻を悪く言うのは!!」
B「おまえの奥さん、ひーとごーろし!!」
A「なんてこった!反論ができない!」
B「正解はですね、遺体は少しでも狭い空間に閉じ込めておくべきだからです。」
A「はい??」
B「私も昔はイヤだったんですよ。棺というんですか?私はやめてって泣き叫んだのに、大好きだったおじいちゃんをみんな狭い箱の中に閉じ込めようとするんです。それ以来ですかね。私も遺体を見ると少しでも狭い空間に閉じ込めるように普段から心がけるようになりました。」
A「言ってることがまるでわからない…!!」
B「そしてあなたもあなたの奥さんも、もうすぐ狭い空間に閉じ込められる。」
A「な?お前!一体何を?」
B「心配しないでください。あなた達の空間はもっと狭いです。
A「まさかお前、俺たちを殺して、棺の中に??」
B「いいえ。狭い空間というのは、『私のお腹の中』ですよ。」
A「何を言って…!……!ひと月前に壊した時計、すごい速さで動いて…。」
B「ああこれですか?これはですね。前に人を食べた時間を示す時計なんですよ。」
A「ひと月前…。そういえばさっき、捜査の途中に遺体を失くしたって、お前まさか!!」
B「ベリ…!ベリベリベリ…!」
A「うわあああああああ!なんなんだよ!!なんなんだよこれ!!ちょっと待ってちゃんとやれよ!!」
B「え?」
A「せっかくドラマの探偵をやってみたいって言ってたのに、全然できてないよ!!ちゃんとやらないと、そんなんじゃ見てる人も誰も納得しないからな!!!」
B「え?ごめん…。俺一言も探偵がやりたいなんて言ってないんだけど…。」
A「コントのつもりをやめろ!!いい加減にしろ。ありがとうございました。」