A(店に入る)
B「1名様で?」
A「あ、後からまた増えるんですけど。」
B「お連れのお客様ですかね?」
A「はい、1匹ペットが来る予定です。」
B「お帰りいただいて。すみません、うちペットはお断りしてまして。」
A「ダメですか?」
B「あと1匹来るというのは、誰かが連れてくるということですか?その方は?」
A「あ、いえ。あの完全に直立の二足歩行を覚えたテナガザルが、明確な意思を持ってここに来ます。」
B「お帰りいただいて。なんですかそれ。めちゃくちゃ怖いんですけど。」
A「でも全然騒がないですし、ちゃんと他のお客様に迷惑がかからないくらいのボリュームで話しますよ?」
B「しゃべるんですかそいつ?絶対店入れれないですよそんなの。お帰り願えますか?」
A「えーでも、完全に二足歩行を覚えたテナガザルの、手の位置は床からどれくらい離れたところに収まるのか、一回見てみたくはないですか?」
B「見てみたくはないです。あの私仕事中なので。暇じゃないんですよ。」
A「じゃあまあペットなしで、1名で。」
B「1名で?」
A「私だけ通してもらえれば。ちゃんとテナガザルのほうには帰ってもらうように伝えとくんで。(携帯を取り出す)」
B「LINEしようとしてます?LINEできるんですかそのサル。」
A「今ちゃんと自然に帰るように送っときました。」
B「野に放ちました?大丈夫ですか?そんなやつ施設かなんかに入れといたほうがよくないですか?」
A「もう二度と会うこともないでしょう。」
B「ペットだったんですよね?ちゃんと責任もって最後まで飼ってくださいよ。」
A「まあまあ、そんな細かいことはグビーっと飲んで、パーッと忘れちゃいましょう。」
B「私は飲まないんですよ、仕事中なんで。えー、まあじゃあ通しますけど、カウンターどうぞ。」
A「(腕を前に構える)おら、来いよ。」
B「どうされました?」
A「カウンターどうぞってことなんで。先にジャブでもストレートでも来てっもらって。あ、悪口とかでもいいですよ。ちゃんと返しますんで。」
B「カウンター席どうぞ。」
A「(席にスッと座る メニュー見ながら)じゃあまあとりあえずお通しのきんぴらごぼういただいて、」
B「こっちで決めさせてもらっていいですかお通し。今日ひじきなんで。飲み物は?」
A「からあげ。」
B「飲み物聞いたんですけど。からあげ一つ。」
A「ハンバーグ。」
B「すみません、うちハンバーグは置いてないんですよ。」
A「とんかつ。」
B「とんかつもないです。メニューにあるもの頼んでもらっていいですか?」
A「肉を甘辛く炒めたやつ。」
B「好きな総菜発表ドラゴン?うち正式名称がわからないやつを正式名称がわからないままメニューに書いてないんですよ。」
A「ごぼうとにんじん炒めたやつ。」
B「きんぴらごぼうかな?きんぴらごぼうだね。さっき言えてましたけど。お通しでも頼んで好き好き大好き?」
A「好きな総菜がまた出てきたその時は発表したい。」
B「食べたいメニューが出てきた時にボタンを押して発表してください。載ってるやつの中から。からあげだけ通しますね。」
A「好きな総菜発表ドラゴンが、今あなたの目の前にいることを想像してください。」
B「はい?」
A「あなたの目の前に好きな総菜発表ドラゴンがいることを想像してください。その想像した好きな総菜発表ドラゴンの大きさが、あなたが普段日常で抱えている、不安やストレスの大きさです。」
B「飲み物聞いていいですか?」
A「ミネラルウォーター。」
B「ねえよ。冷や水だよ冷や水。フランスのレストランじゃないんだようちは。」
A「じゃあ冷や水で。」
B「居酒屋なのでうち。飲み物でお金落とす気無いなら帰ってもらっていいですか?」
A「じゃあ帰ります。」
B「何しに来たんだこいつ。ありがとうございました。」
A「お会計は?」
B「払ってくれますか?ラッキー。じゃあ好きな額だけ置いてってください。」
A「PayPay使えます?」
B「こっちで額決めていいやつだ。」
A「あ、テナガザルからLINE来ました。」
B「なんですか?」
A「店覚えたからな、だそうです。」
B「こっわ。」