コント 「探偵の直感」

コント「探偵の直感」

 

(A、B板付き)

A「被害者の伊藤さんは女子トイレの中で、現場に落ちてたこのナイフで刺されて殺されました。その犯行時刻は午後10時ごろ。そして、その時間に犯行が可能であった人物はこの中でたった一人。犯人は、片山さん、あなただ。」

B「………な、何を言い出すんですが突然。私が犯人なわけないでしょ!」

A「ですが先ほども言ったようにあなた以外は全員その時刻にアリバイがあります。この事件の犯人は、間違いなくあなたなんですよ。」

B「ふ、ふざけるな!優秀な探偵か何だか知らないが、勝手に人を犯人と決めつけて!大体そんなに言うなら証拠でもあるのか!私が伊藤さんの喉を刺して殺したっていう!その証拠が!」

A「(不適な笑みを浮かべる)……証拠?そんなもの、ありませんよ?」        

B「ないって…。そんな自信満々に……」

A「今まで私は様々な難事件をすべて己の感、つまりは直感だけで解いてきました。論理、推測、洞察、私の推理にはそういったものは全く必要ないのです。」

B「そ、そんなので、私を犯人だと決めつけるなんて…!」

A「そして今宵もその直感は当たっていたああ!片山さん、あなた口走りましたね。伊藤さんは喉を刺されて殺されたと。どうしてあなたがそのことを知っているんですか?」

B「………!それは……。」

A「今回現場である女子トイレには警察の関係者以外一人も入れていません。私がそう指示しましたので。喉を刺されたという事実は本来犯人しか知りえない情報なはずです。それをあなたが知っている。それは、どういうことでしょうね?」

B「………。」

A「それともあなた、まさか、用もなく女子トイレにでも入ったとでも?」

B「………。」                                                                              

A「刑事さん、連れて行ってください。」

B「………………………………………。」

B「……………………………女子トイレに…、入りました。」

A「……………(首をかしげる)今なんと?」

B「……………………女子トイレに…、入りました。」

A「………(ため息をつく)。あのねえ片山さん、いくら犯人にされたくないからって、見苦しいですよ?男であるあなたが、女子トイレにわざわざ入る理由がない。それともまさか、女子トイレに入りたいから入ったとでも。」

B「はい、私は、女子トイレに入りたくて、入りました。」

A「ふざけないでください。そんなのが通用するわけないでしょ。この事件の犯人はあなたしかありえないんですよ。じゃああなたは性的な理由で女子トイレに入りたくてわざわざ入った!」

B「はい!私は!性的な理由で女子トイレに入りました!」

A「それは女性が用を足す姿を見たいという性癖があってそれを満たすためである!」

B「はい!私は!女性が用を足す姿を見たいという性癖があり!それを満たしたかったんです!」

A「そして今回、お、誰かいる、ラッキーと思って覗いたら、殺された伊藤さんだった!」

B「はい!私は、お、誰かいる、ラッキーと思って覗いたら、殺された伊藤さんでびっくりしました!」

A「ふざけるな!いくら殺人犯の罪から逃れたいからって。それで通用すると思ってるんですか?大体あなた普段学校で教師やってるんでしょ?恥ずかしくないんですかその姿?……じゃあ、あなたは普段から学校でも女子トイレに入っている!」

B「はい!私は!普段から学校でも、女子トイレに入っています!」

A「なんなら自分が直接クラスを担当している教え子のが見たいなあと常日頃から思っている!」

B「はい!私は!自分が直接クラスを担当している教え子のが見たいなあと常日頃から思っています!」

A「正直もう、女子トイレの臭いが大好きで、女子トイレを見ると入られずにはいられない!」

B「はい、私は女子トイレの臭いが大好きで、女子トイレを見ないと入られずにはいられません!」

A「オウム返しじゃん!!なあ!あんた教えている生徒よりも子供か?さっさと素直に殺したこと認めてくださいって!」

B「………。」

A「……じゃあ!今回女子トイレに入ったのは、用を足す姿を見るためだけじゃない!あなたは性癖で!女子トイレの便器の水を飲もうと考えている!」

B「はい!私は!便器の水をゴクゴク飲む性癖を持っています!」

A「そしてその便器の水は水筒に汲んで、普段から持ち歩いて飲むようにしている!」

B「はい!私は!便器の水は水筒に汲んで、普段から持ち歩いて飲むようにしています!」

A「引き下がれって!!なあ!あんた今かなりやばいこと言ってるよ?わかってます?」

B「はい!私はなんなら休日は!便器の水からハーブティーを入れて!優雅にティータイムを愉しんでいます!」

A「あ、あ、そこまでは言ってないですよ私?一言もそんなこと言ってないです!」

B「だけど!殺人犯として捕まるくらいなら!女子トイレに入っている人間になったほうがマシだ!!」

A「ほんとに?なんかもうどっこいどっこいって感じしてるんだけどこっち?正直だいぶヤバい人間ですよ今?…ええー?じゃあ、あなたは便器の水だけじゃない、便座なんかも舐めるのがとても好きだ。」

B「はい、私は女子トイレの便座を舐めるのもとても好きな人間です!」

A「そして今回我慢できず、女子トイレの便座を外して持ち帰っている。」

B「はい、私は我慢できなかったので、女子トイレの便座を外して今回持ち帰っています。」

A「なああああ。一向に埒が明かん…。あのねえ片山さん!いいですか!自分がもし本当に殺人犯じゃなくて!それでも女子トイレに入ってそういうことをやったと相手に認めさせたいなら!証拠がいるんですよ証拠が!!」

B(自分のリュックを探る)

A「あなたが本当にそういう目的で女子トイレに入ったというのなら!!今すぐ出してみてくださいよ!!その!!!持ち帰った!!!!便座とやらをねえ!!!!!」

B(リュックから便座を出す)

A「えーーーーーー!持ってるーーーーーー!なんでーーーーーーーーー!!!!???????」

B「だから言ってるじゃないですか。私は女子トイレに入ったと。」

A「………いやだとしても。伊藤さんを殺した犯人は、あなたしかありえないんです!伊藤さんを殺したのは!絶対にあなたなんですよ!」

A「………はい?ちょっとなんですか佐川さん。今片山さんと話してるので、あなたは黙っていてください。」

A「……ん?はい?」

A「………私が、殺りました???」

(B、Aを睨む)

A「……え、片山さんの姿見てたら、申し訳なくなってきて、正直に言ったほうがいいとも思ったって…。いやでも、ちょっと待ってください佐川さん!あなたにはその時間アリバイが!」

A「…ん?ほう?はい。」

A「……あ、なるほど。時計の時間をずらして。」

(B、Aを睨み続ける)

A「あー、そういうことだったんですねー。」

A(しばらく考える)

A「ならいけますねえ!」

(B、Aをめっちゃ睨む)

A「あ!ごめんなさい佐伯さん!動機語るのはもうちょっと後にしてもらっても大丈夫ですか?今ねえ、すごいねえ、ちょっと緊急で謝らないといけない案件がでてきてるんですよ。」

A「いや、ほんと申し訳ない、せっかくねえ、その動機って人に聞いてもらいたいところなのに。いや完全にこちらの不手際で、すいません。」

A「ちょっとだけお待ちくださいね。」

(B、Aを睨み続ける)

A「……………。」

B「……………。」

A「……………申し訳ございませんでした。」

B「くらあああああああああああああ!やってくれたなああああああ!探偵さんよおおおおおおおおおおお!」

B「今あああ!一人の社会人があああ!社会的に死にましたあああああああ!!!!」

B「あのなあ探偵!探偵っていうのはなあ!!観察して!聞き込みして!論理的に!確信をもって問い詰めていくもんなんだよおお!!それを全部!直感というあいまいなもので!!楽してやってんじゃねええ!!そしてええ!殺人と関係ない裏の内容を!全部直感で当てるんじゃねええ!!!!!!」

A「いや、本当に今回は申し訳ないと思ってます。」

B「なんだお前!直感とかなんとか!それで人を殺人犯にしやがって!二度と探偵の名を名乗るんじゃねえ!」

A「いや、ほんとすみません。」

B「全国の真面目にやってる探偵に謝れ!ダボが!死ね!ボケ!」

A「はい、もうほんとうに、すべてそちらのおっしゃる通りです。」

B「二度と俺の前に顔見せるな!殺すぞ!さっさと人殺したそいつ連れて!どっかにいけ!消えろ!!」

A「いや、本当に、申し訳ございませんでした(深く頭を下げる)。はい、すいません、佐川さんもいろいろ。こんなことになってしまって。本当にすみません。それじゃあ刑事さん、連れて行って下さい。」

B「…………、あ?なんだ刑事さん?ちょっと待て!俺じゃねえって!俺は殺してないってさっきわかっただろ!」

A「いや、あのー、あなたのやってること、普通に犯罪ですし、便座も壊してるので、器物破損罪なんですよ。」

B「離せ!待て!離せってちくしょう!このやろう探偵!殺してやる!覚えとけよ!!!!」

(B、退場する)

A「………いやあ、これで無事に殺人の事件を解決しましたし、裏で起きていたちょっとした事件まで解いてしまいました。一度は外したように見えた私の直感も、ここまでいくと、ちょっと自分でも恐ろしいですねえ。」

A「どんな事件も直感のもとに!推理なんて必要ない!ビビット解決!それが私!!直感探偵なのです!!!(キメポーズ決める)」

(暗転終わり)