コント「お金返して」

コント 「お金返して」
 
(設定:ファミレス)
 
A「えーと、ミートドリア1つと、あと、」
B「イカとエビのスパゲティ。」
A「以上で。はい。」
B「………。」
A「でさ、話って何?珍しいよね。お前からこうやってご飯誘ってくるの。」
B「………。」
A「ん、どうした?」
B「……あ、とりあえず…、これを。(紙袋を渡す)」
A「(紙袋を受け取る)ん?なにこれ。お土産?え?なんかどっか行ってきたの?」
B「………。」
A「ん?なんかよくわかないんけど。これ中身なんなの?」
B「佐賀牛。」
A「生肉じゃん。」
B「1kg。」
A「結構な量じゃん。え、大丈夫?これ冷凍とか特にされてないけど。氷とかちゃんと入ってる?」
B「今日お前と会う前に買ってきたやつだから。」
A「じゃあお土産じゃないじゃん。だとしても氷は入れるべきだしね。え?ほんとになんなのこれ?」
B「いいから。もらっておいて。」
A「えー、食べるかわかんないよこれ。」
B「………。」
A「で、話は?」
B「………。あ…、あのさ………。お金、返してほしいんだよね。」
A「………ん?」
B「3万円。できればちょっと、返してほしいかなって。」
A「………。え?これ代のこと?(紙袋を指す)
B「違う違う違う違う違う。」
A「いやだとしたら肉返すよ?」
B「違う!そうじゃなくて。3万円。今月正直俺、きつくてさ。さすがにちょっと、金返してもらえたらなあって思っててさ。」
A「いやいや。違うじゃん…。借りてないじゃん。俺お前に。」
B「………。」
A「俺お前にお金借りたことないし、逆に言えば今まで貸したこともないし。そういう金の貸し借りみたいなのって、これまでやってこなかったじゃん。え?何の話してるのお前?もしかして誰か違う人と勘違いしてない?」    
B「………。(深いため息)はあ………。あのさ、なんていうかこう…、あんまり面と向かって、はっきりと言うことじゃないかあって思って…。言わなかったんだけどさ。」
A「うん。何?」
B「………お前離婚したじゃん。」
A「したね。ほんとにはっきり言うことじゃないな、これ。」
B「でさ、俺…、結婚式の時、お前にご祝儀を渡してるんだよね。」
A「おう、もらったね確かに。」
B「あれ、返してくんない?」
A「……………は?」
B「いやだから、ご祝儀。渡したじゃん。あれを返してほしい。」
A「………いやいやいや。ご祝儀ってそういうことじゃないじゃん。」
B「いやでも俺は、2人が結婚して、おめでとうってことで渡してるんだよ。で、今回こういうことになったわけじゃん。だったら返してほしいなって。」
A「…いやだからそれは違うって。そりゃまあ申し訳ないとは思うけど。でも、離婚したから祝った分返してっていうのは違うじゃんか。」
B「いやでもなんなら。俺は、お前が結婚するとき、もうすでにお腹の中に子供もいるって聞いてたから。それで、今後の生活も大変になるだろうなと思って。少しでも2人の生活の足しにしてくれたらっていう思いで、あのお金は渡してるんだよ。で、今もうその生活が解消されたわけじゃん。だったらそれは、デポジットとしてやっぱり返してほしいんだよ。」
A「デポジットでなんだよ!祝儀そんなシステムでやってねえよ。考え方が間違ってるって。いやだから、そういう思いがお前にはあって、それを俺が裏切ってしまったっていうこのことについては、それはもう申し訳ないと思ってるよ?でも、それでご祝儀を返すっていうのは、もう違う話じゃんか。」
B「じゃあこの際言わしてもらいますけど!俺は、結婚式に行った時、祝儀を払うかは迷ってました!」
A「迷うな!迷うところじゃねえだろそこ!結婚式に出てくれてる時点で必須で払えよ!」
B「いっても俺もそんな金持ってないし。生活厳しいし。どうしようかなって。それで迷いながら式見てたら、お前言ったじゃん!神父さんに対して!『スコヤカナルトキモ、ヤメルトキモ、ソノイノチアルカギリ、アイスルコトヲチカイマスカ?』『誓います。』誓いますって!誓いますってお前言ったじゃん!俺はお前の!その言葉を!姿を見て!ああこの人なら祝儀を払って大丈夫だなと!そう思って!お前に投資することに決めたんだよ!」
A「投資って何!?投資っていうのは何!?お前、ちょいちょいさっきから言葉おかしいぞ!」
B「それを今回完全に裏切ったわけじゃん!じゃあもう契約違反だよ!」
A「祝儀に使う言葉じゃないんだよそれも!契約とかないから!」
B「ちゃんとお前にはこの件について、説明してもらう責任があると思います。わかりました。株主総会です。」
A「わかりましたじゃないから。結婚式に参列して祝儀払ってくれた人みんな株主か?頭冷やせって。」
B「じゃあまず、祝儀についての使用用途について。」
A「いやいや続けるなよ。」
B「私達が払った祝儀はどこにいったか、あなたには説明してもらう義務があると私は思います。結婚式で集めたご祝儀、一体に何に使ったんですか?」
A「結婚式にだよ。大体そうだろ。式にはお金がかかるから。それに対しての補助金として、今回使用させていただいてます。これで満足?」
B「………。」
A「それにそういう意味でいえばちゃんと引き出物を渡してるじゃん。ご祝儀に対するお返しとして、ちゃんと来てくださった方には引き出物渡したでしょ?だからそれとは別に、また改めてお金を返すなんてことはもうないんだよ。」
B「だからそう言うと思って、お前にはちゃんと引き出物の分のお肉をさっき渡したじゃん。」
A「これそれかよ!何の肉かと思ったら!」
B「引き出物のカタログギフトで俺佐賀牛1kg頼んだから。その分はちゃんと返した。だからお前も3万円返して。」
A「じゃあいいよこの肉返すよ!こんな意味不明な生肉!(無理矢理突き返す)。」
B「いやこれを返されても困るんだけど。」
A「お前が買うからだろ!無駄に!何にお金使ってるんだ。それにほら!料理!式の時にちゃんと料理も振舞ってるわけじゃん。それで祝儀の分のお返しとしてはもう十分でしょ?」
B「じゃあ今日食べた料理のお金に関しては俺が払うよ。」
A「額が合わねえよ!全然対等じゃねえよ!」
B「じゃあわかった別の店行こ。もっと高い店で俺がおごるから。」
A「違うそうじゃない!なんで無駄な出費をさっきから増やそうとするんだ。お前今月厳しいんだろ?」
B「だからそれは、お前に3万円返してもらうためだよ。」
A「諦めろってなあ。とにかく俺がこの理由でお前にお金を返すことは絶対にないから。」
B「……なるほどわかった。店員さん呼ぼう。(ボタンを押そうとする)」
A「呼ぶな呼ぶな呼ぶな!(ボタンを取り上げる。)呼ぶなよお前!なんで店員さん呼ぶんだよ?」
B「このままだと決着着かないじゃん。ならお困りの時は店員さん呼んで助けてもらうべきだろ。」                                                   
A「向こうが困るだけだろ!店員さん呼んでいいのは、お店に関して困った時だけです!巻き込んであげるなこんなことに。」
B「お前店員さん呼んだら自分が不利になるからってそれはずるいぞ。」
A「俺が勝つよ100%。店員さんに説明して意見聞いても絶対にこっちが勝つから。それを踏んだ上でこんなこと説明するの恥ずかしいからイヤなんだよ俺は。」
B「なんでだよ。離婚してもご祝儀返さないのは民意か?わかんないだろそんなの。」
A「民意だって。ご祝儀返してって言ってるの結婚式出た人達の中でお前だけだから。その時点で絶対そういうもんなんだよ祝儀は。」
B「………。」
A「それにここでお前に変に返して、特例作ったら余計話がややこしくなるから。全員に返さないといけなくなるから。だからもうお前に渡すことはありません。」
B「……なんでだよ。そんなの泥棒じゃん。俺が渡した3万お前返せよ。」
A「返しません。」
B「返せよ3万。ずるいぞ。3万円返してもらわなきゃ俺はもう今日帰らないからな。」
A「………。(頭掻く。)」
B「3万円。きっちり。払えるだろ3万くらい。なあ。」
A「………。あのさ、直接はっきり言うことじゃないから、ずっと言わなかったけど。」
B「………?」
A「お前、1万じゃん。」
B「………。」
A「お前、1万円じゃん、祝儀で払ったの。申し訳ないけど、ちゃんとああいうの数えてるからね?みんなが3万円以上、ありがたいことに払っていただいてる中、お前だけが1万円だったから俺覚えてるんだよ。」
B「………。」
A「別にそれに対してどうこう言うつもりもないし、直接言うのもどうかなと思ったからここまで言わなかったけどさ。それで3万円返せっていうのはおかしいでしょ?」
B「………おかしくないよ。」
A「いやいやおかしいよ。」
B「おかしくないよ。だってそれは、せっかく祝ったのに、離婚をして裏切ったっていう、俺に対する慰謝料じゃん。」
A「慰謝料ってなんだよ!」
B「慰謝料じゃん!なんでだよ!離婚には慰謝料がつきもんだろ!」
A「慰謝料が適用されるのは!嫁にだけです!!あとは息子の養育費!覚えとけバーカ!!」
B「………。」
A「嫌なこと思い出させるなー。俺は嫁に慰謝料と養育費、払わないといけないんだよ。だからお前にお金を払う余裕もないし、理由もおかしいから、だから何度も言うけどこれに関しては払いません。ほら、ちょうど店員さんも料理運んできたし、この話は終わり。な?」
B「………。」
A「………。」
B「………。」
A「………。」
B「………店員さんこいつ離婚したんですけど。」
A「聞くな聞くな聞くな聞くな!」
B「祝儀を全然返してくれなくてですね。」
A「聞くなって!あ、大丈夫です店員さんほっといていただいて。はい。ミートドリアこっちです。」
B「おかしいと思いませんか?」
A「はい、以上で揃ってます。はい、こいつのことはほんとに大丈夫なので。はい。」
B「………。」
A「……やめろってお前。マジで何考えてるんだ恥ずかしい。」
B「………。」
A「さっきからどうしたんだよお前。今日おかしいぞ絶対。」
B「なんで離婚したんだよ!!!!!!(ここまでで一番大声で)」 
A「…………急にどうしたんだよ。」
B「なんで離婚したんだよ!!!式挙げてた時!!あんなに仲良くて!!幸せそうだったじゃん!!!なのに!!なのになんでお前離婚したんだよ!!!!」
A「………お前お店にいる人全員こっち見てるぞ。全員に俺が離婚したの伝わったじゃん。(客のほうへ)すいません、あのお騒がせして。あの、大丈夫ですので。」
B「………。」
A「…それ食って1回落ち着け。」
B「………。」
A「………。」
B「………。」
A「………。向こうの浮気だよ。」
B「………え?」
A「向こうが、別の男作って、浮気した。だから離婚した。それだけだよ。」
B「…え、でもお前慰謝料がどうって。」
A「だから、浮気したのは俺に魅力がなかったからって。それに子どもを養うお金もないからって。それで請求されてるんだよ。理不尽な話だろ?」
B「………。」
A「な?これ以上理不尽に払う金を俺は増やしたくないんだよ。だからこういうことになって裏切ったことに関しては申し訳ないと思うけど、お前に払う金はありません。これで話は終わり。」
B「…………………ごめん。」
A「………いいよ別に。」
B「………、え、ちなみにそれっていくらなの?」
A「200万。」
B「………200!?」
A「………。」
B「………。」
A「………。」
B「………(ゆっくりお店の伝票を引き寄せる)
A「いい!いい!いい!いい!!」
B「ここは俺がおごるから。」
A「お前も金ないんだろ!さっきまで理不尽に3万請求してたやつが!!変に気遣うんじゃねえよ!!」
B「………(紙袋手に取って)お肉、いる?」
A「いらねえよ!!!」