漫才「散髪屋」

漫才 「散髪屋」

 

A「○○○です。よろしくお願いいたします。なりたい職業がありまして、散髪屋さんやりたいんですよね。髪切って人をおしゃれにするのってかっこいいじゃないですか。」

B「なるほどねー。でもね、俺もなりたくない職業があって。」

A「なりたくない職業?」

B「散髪屋ね。」

A「おい。」

B「なりたいってやつの気がしれない。」

A「喧嘩売ってるの?」

B「でも、散髪屋ってさ、なんか簡単そうだし、正直大学行ってない人がなるような職業じゃん。」

A「怒られるよマジで!!見てる人の中にいたらどうするの!?大体、散髪屋ってめちゃくちゃ難しいからね?髪切るのもそうだけど、切ってる間お客さんとちゃんとコミュニケーション取って話さないといけないんだから。」

B「余裕余裕。誰だってできるよ。猿とかでもできるんじゃない?」

A「………。じゃあわかった!お前やってみろよ!俺がお客さんやるから!そんなにできるっていうなら!お前散髪屋として、完璧に対応してみせろ!」

B「オッケー。」

A「俺がやりたいって話だったんだけど…。」

B「皮肉だよね。」

(A、店に入ってくる)

B「いらっしゃいませ!お客様、ご予約はされてますか?」

A「あ、いえ…。」

B「あ、予約なしでも大丈夫ですよ。今空いてるので。こちらの席どうぞ。本日はどのようにされますか?」

A「おまかせでお願いします。」

B「おまかせ。おまかせですね、かしこまりました。そうですねー、お客様結構髪の毛伸びてきてらっしゃいますので、思い切って今回短く、さっぱりとした髪型にしましょうか?」

A「おまかせでお願いします。」

B「じゃあそうしましょう!さっそく切りますので。失礼いたします。」

(B、髪を切り始める)

(A、黙って座る)

B「……………。お仕事何されてるんですか?」

A「………、私、働いてなくて。」

B「あー、なるほど…。でもまあお客様のように働いてない方も結構うちの店来られるんですよ。髪型変わることで今までと印象変わる方もおられますし。次、来店した時には仕事見つけたっていう方もいらっしゃいましたから。全然いいと思いますよ。」

A「………。」

B「はい、切り終わりました。後ろこんな感じになってますので。どうですかね?」

A「………はい、大丈夫です。」

B「大丈夫ですかね。ではすみません料金頂戴いたします。あ、あとこれ、うちの店ポイントカードやってまして、来店のたびに押させていただいてて、割引とかやってますので、よろしければご利用ください。」

A「………。」

B「それでは、本日はご利用ありがとうございました!またお越しくださいませ!ほらね?散髪屋って、誰だって簡単にできるんですよ。」

A「次の日。。。」

B「次の日?」

(A、店に入ってくる)

A「カットお願いします。」

B「…………………………………?昨日、来ませんでした?」

A「カットお願いします。」

B「…………………………えーと、こちらの席どうぞ。………そうですね、今日はどういった髪型で。」

A「おまかせでお願いします。」

B「おまかせーー。おまかせ……………、そうですね、昨日結構切ってしまったので…、もう少し短くいきますか?」

A「おまかせでお願いします。」

B「じゃあとりあえずそうしましょうか。すいません、切らせていただきますね。」

(A、黙って座る)

B「………………………………。お仕事のほうは?」

A「無職です。」

B「ですよねー。………………………。

……………はい、じゃあこんな感じで。後ろはこうなってますけど、どうですかね?」

A「………はい、大丈夫です。」

B「大丈夫ですか?ならよかったです。」

(A、席を立つ。ポケットから財布を出す)

B「あ、お金は大丈夫ですので!昨日いただいてますし。こちらの昨日の切り方に問題があったと思いますので。」

A「あ、いえ。これ、ポイントカード。来店の度に押すって書いてあるんですけど。」

B「………………………。……そうですね!押させていただきます!(ポイントカードを押す)はい、押しました!すいません2日連続で来ていただいて。本日はご利用ありがとうございました!

ほらね!変わった客とかは来ますけど!接客としてはそんなに難しくないんですよ!」

A「次の日。。。カットお願いします。」

B「………………(Aを睨む)。………………髪型は?」

A「おまかせでお願いします。」

B「おまかせ………………。そうですね…………。………お客様、一度こちらのカタログから選んでいただいてもよろしいですか?こちらに載ってる髪型の中で、これがいいっていうのがあれば教えていただけると。そうですね、はじめからこうすればよかった。」

A「あ、じゃあこのポニーテール。」

B「無理ですね。」

A「なぜですか?」

B「切ってしまいましたので。がっつり。そもそも最初の時点でそこまでも長くなかったですし。

…………………………。…………どうしましょう?一か八かパーマ当てます?」

A「おまかせでお願いします。」

B「一か八か当てましょう!!もうそうしましょう!!!こちらの席どうぞ!!!」

(A、黙って座る)

(B、黙ってパーマを当てる準備をする)

A「………………………。お仕事何されてるんですか?」

B「散髪屋です。自明です。あのそういうのこちらから聞きますので。………………。はい、じゃあこれで!パーマ当たりました。」

(A「、財布を出す)

B「スタンプカード押させていただきます!料金結構ですので!本日はご利用ありがとうございました!!

こういう難しい対応もね、まああるにはあるとは思うんですけど!」

A「次の日。。。カットお願いします。」

B「帰れ!!!!!帰れよテメエ!!!!!!!なんだお前?!!散髪屋に日通いするんじゃねえよ!!!!髪型はあああああああ!?」

A「おまかせでお願いします。」

B「おまかせやめろおまかせ!!!!!お前が毎日おまかせで頼むから!!!こんなベリーショートパンチパーマになってんだろうが!!!!!やめろ!!!これ見たら自信なくすんだよ!!!こっちにすべてを委ねるな!!!!!」

A「おまかせでお願いします。」

B「いいから帰れ!!!!二度と店に来るんじゃねえ!!!!」

A「次の日。。。カットお願いします。」

B「月曜日でーーーーーす!定休日でーーーーーす!!お帰りくださーーーーーい!!」

A「次の日。。。カットお願いします。」

B「第3火曜日でーーーーーす!!定休日でーーーーーす!!申し訳ございませーーーーん!!!」

A「次の日。。。。カットお願いします。」

B「すいませーん!うちの子が熱を出してしまいましてーーーー。本日臨時休業いただいてるんですぅーーー。」

A「あ、じゃあ予約していいですか?」

B「予約???」

A「予約。初日来た時、予約してるかどうか聞いてましたよね?」

B「………………………承っております。」

A「あ、じゃあ明日、」

B「明日…………。」

A「から十日間。」

B「十日間…………、」

A「十人で。」

B「十人……、十人??!!え、十人??十人ってどういうことですか???」

A「十人の僕が来ます。」

B「十人の僕が来ます?????ごめんなさい、全然理解ができてないんですけど?」

A「あ、ごめんなさい。僕あのクローン技術で自分が十人いまして。アバターなんで髪型とかはみんなで共有してるんですけど。記憶の受け継ぎがあいまいでそろそろ髪切らないといけない時期だなーみたいな記憶があったので。財布見てポイントカード入ってたから、この店に来させていただいてるんです。」

B「わからないわからないわからない!ちょっと待って!!無茶苦茶がすぎるよ!!」

A「ほら、散髪屋って簡単にできないんだよ。」

B「客がイレギュラーすぎるって!!なんだよ最後!!クローンとかアバターとか!!働いていないやつのコピーを十人も作るんじゃねえよ!!!!」

A「いやでも散髪屋のことすごいバカにしてたからさ。猿でもできるみたいな。」

B「…それはほんと申し訳なかったけど、」

A「いやでもほんとすごいバカにしてたから?なんていうかその?僕もつい、“カッと”してしまいました。」

B「………………。」

A「………………。………今のはカットに?」

B「できねえよ!!!いい加減にしろ。ありがとうございました。」