漫才 「美術館」

漫才 「美術館」
 
A「どーもー。○○○と申します。よろしくお願いいたします。」
B「最近、美術館に行きたいなあと思いまして。」
A「美術館?」
B「美術館に行って、いろんな芸術に触れてみたい。」
A「カッコつけてますね。」
B「決めつけがひどい…。そしてどうせなら?日本のじゃなくて?海外の美術館みたいな?」
A「海外。なるほど、蝦夷ですね。」
B「怒られますよ?やめてください問題になるような発言。」
A「でも蝦夷だったら当時のいろんな発掘品とか見られそうじゃないですか。」
B「それもう民芸博物館では?そうじゃなくて、例えばこうヨーロッパとか、普段見れない芸術を見てみたいんですよね。」
A「なるほど。まあ確かにどうせなら、世界で一番二番の美術館に行ってもらって、是非いろんなものを見てほしいですけどね。(コントイン)
B「よーし着いたぞー!海外の美術館!今日はーたくさんの芸術をー見るぞー!」
A「美術館では静かに!」
B「うわびっくりした!」
A「美術館の中で騒がない!なんですかあなた高卒ですか?」
B「決めつけがひどい…。」
A「見るぞー!ってバカまる出しで。」
B「失礼な。そういうあなたは誰なんですか?」
A「私、この美術館でガイドをしております、小林と申します。」
B「ガイドさん。へーこれだけ大きい美術館だとガイドがいるんですね。」
A「はい。」
B「ちなみに小林ということは日本人の方?」
A「そうです。」
B「へー、僕も日本人で、英語しゃべれないんで、日本の方がいると心強いです!」
A「それはよかった。僕もあなたと同じで英語しゃべれないんで助かります。」
B「しゃべれないんですか?」
A「はい。」
B「え?ガイドは?」
A「日本人オンリーを相手にやらせていただいてます。」
B「ここ海外なのに?え?そんな日本の方来られるんですか?」
A「いえ。ですのでだいぶ暇ですね。」
B「ですよね?え?ほんとに日本の方だけを?」
A「はい。あとは蝦夷担当です。」
B「分けないでください問題になりますので。はあ、そんなガイドさんがいるんですか。」
A「まあでも他のガイドも中国オンリーとかケニアオンリーとかそんなんですしね。」
B「ケニアオンリー。」
A「ですので今日は久々なのでとても張り切っています。よーし!がんばって案内するぞー!」
B「美術館では静かに。でもせっかくですし、ガイドはお願いしようかな。」
A「かしこまりました。では最初に当美術館の注意事項をお伝えさせてください。まず先ほども言いましたが美術館では騒がないようお願いいたします。高卒と思われますので。」
B「高卒と判断するのはあなたの偏見です。」
A「また、当館は全フロア禁煙となります。もしどうしても吸われたい場合は彫刻とかの裏に隠れて吸っていただく形で。」
B「絶対ダメでしょ美術品の近くで。彫刻の裏のスペースに立ち入れるのもヤバいですし。見つかったら怒られないんですか?」
A「ガイドさんによってはすごい怒ったりもしますね。」
B「基準統一しておいたほうがいいですよ?」
A「また写真や動画などの撮影は堅くお断りしています。もしどうしても絵画とかを何か形に残しておきたい場合は、その場で写生していただく形になりますので。」
B「しないですよそんなこと!美術館で他人の絵を描き写すとか。めちゃくちゃ恥ずかしい。」
A「絵具やキャンバスはお土産コーナーのものを利用していただいて。」
B「贋作作りをオフィシャルで認めるな。」
A「注意事項はそれくらいですね。」
B「あ、じゃあどんなのがここに展示されてるか教えてもらっていいですか?僕あんまり知らないので。」
A「そうですね。一応私パンフレットも持ってますが。絵で、日本の方でもわかるようなものとなると、こちらの『笛を吹く少年』とかですかね?」
B「これ!教科書で見たことあります!横笛吹いてるやつ!へーあれがあるんですか。」
A「あと、こちらの『太鼓を叩く少年』。」
B「太鼓を叩く少年…。それは初めてですね。」
A「あと、『アコーディオンを鳴らす少年』。」
B「アコーディオン…。」
A「あと、『隊を先導する少年』。」
B「鼓笛隊の人達に宣材頼まれてますその画家?依頼受けて書いたんですかね?」
A「あと、『ギターを叩き割る少年』。」
B「鼓笛隊に急にパンクなヤツが。絶対隊で浮いでますよこいつ?」
A「あと、他の画家の絵で行くと、こちらの『真珠の耳飾りの少女、りなちゃん』。」
B「りなちゃん…。日本の方じゃないですよね?描かれてるの。」
A「あと『牛乳を注ぐ女、さえちゃん』。」
B「さえちゃん…。」
A「あと『泣く女、ゆいちゃん』。」
B「そのちゃんづけの名前入れるのやめてもらえます?急に風俗の写真感が出るんだなあ。」
A「あと『モナちゃん』と『リザちゃん』です。」
B「モナリザを分けないでください。何別々にしてるんですか。え!でもここモナリザ見れるんですか?あの有名な!」
A「はい、でも本物ではなくてですね。」
B「本物ではない?」
A「一時期借りて飾らせていただいた時期があって、それをお客さんが写生して描いたものを今は買い取って展示させていただいてます。」
B「贋作!モナリザを美術館で写生??滅茶苦茶な度胸!その絵はその絵で見たいですよ。」
A「かしこまりました。ではこの絵をご指名ということで指名料が。」
B「風俗のシステムなんですかここ?入場料で全部見せてくださいよ。」
A「あと他の展示品でいくと…、有名な彫刻でこちらの『考える人』がありまして。」
B「考える人!あの有名な!」
A「ただ、申し訳ないんですけど今ちょっと切らしてまして。」
B「切らしてるの意味がわからないんですけど。飲食店ですか?」
A「で、ちょっと代わりに置かせていただいてるのが。」
B「代わりがあるんですか。」
A「こちらの『考えるミッキー』です。」
B「ミッキー!ディズニーのミッキー!え、ミッキーは何を考えてるんですか?」
A「転職とかですかねー。」             
B「ベストの仕事でしょ!他に何の仕事ができるんですかあいつ?」
A「『やあ!僕ミッキー!パレードが腰をいわしてしんどいよ!』」
B「絶対言わないですよそんなの。夢ぶち壊しじゃないですか。これまず版権大丈夫なんですか?」
A「版…権……?」
B「あ、やばい。絶対わかってない。」
A「あと有名な彫刻は『ミロのヴィーナス』。」
B「すごい有名なの置いてますねこの美術館。」
A「ですがこちらも切らしてて今は代わりを置いてまして。」
B「その切らしてるってのがよくわからないんですよ。また代わり?」
A「はいそれがこちらの彫刻、『バボちゃん』です。」
B「バボちゃん!!え、あのピンクの丸い!?バレーの!?」
A「はい。」
B「ここ世界ですよね?まず伝わらないですよ?なんでそれで行けると思ってるんですか?」
A「日本のバレーは世界で通用しますよ!」
B「そういうこと言ってるんじゃないんですよ。えーやばー、この美術館。ヴィーナスの代わりにバボちゃん。」
A「あと、今日は見れないですけど近々日本の彫刻が近々飾られる予定をしています。」
B「日本の、ちなみにどこの何ですか。」
A「亀有の、」
B「亀有。え?もしかして両さん…?」
A「はい、街にある両さん像が全部来ます。」
B「なんで?だからなんでそれが世界で通用すると思ってるんですか?」
A「そして今回なんと、全部頼んだので特別に、寺井の像が来ます。」
B「だからなんなんですか?海外の人がそれ見て『Oh!テライ!』とはならないでしょ。バイヤーがイカれてますって。誰がやってるんですか。」
A「(静かに手を挙げる)」
B「お前かーい。お前がやってるんかーい!」
A「すみません、仕事が暇すぎてですね。」
B「英語勉強しましょうよ。」
A「気づいたら日本のものを仕入れてしまいました。」
B「いったん祖国に戻りましょう。」
A「両さん像が来たときはまた是非こちらに来ていただいてご覧になってください。」
B「亀有に行きます。もういいや帰ろ。」
A「どうでしたか海外の美術館?」
B「ん、ガイドが変な印象しかなかったらわ。」
A「やっぱり足を運ぶならー!蝦夷の民芸博物館!」
B「ディスったのを取り返そうとするな。まあそういうことにしておきます。ありがとうございました。」