コント 「コンビニのバイト終わり」

コント 「コンビニのバイト終わり」
 
(設定:コンビニの裏の休憩室)
 
(Bが座って休憩している)
(Aが帰ろうとする)
A「お疲れ様でーす。」
(A、リュックを背負っている。両手にはパンパンに詰まったレジ袋2つ持っている。)
B「あ、ちょっとちょっと、ごめんちょっとだけ大丈夫?」
A「はい?」
B「えーと、川北くんだっけ?」
A「はい。」
B「今日何日目だっけ?」
A「えーと、3日目です。」
B「そっか。あのー、明日からもう来なくていいから。」
A「はい?」
B「じゃあ、お疲れ。」
A「いやいや…、ちょっと待ってください店長。急にそんな…。僕が一体何したっていうんですか!」
B「いや、それ…。(手に持ってるレジ袋を指す)」
A「………。」
B「買ってないでしょ、それ。」
A「……いやですが、これは売れ残りのやつで、持って帰っていいっていわれたから。」
B「度が過ぎるよ。度が過ぎるよ君。」
A「……。」
B「びっくりしたー。初日も君が帰るところ見たの。そしたらすごい手に持ってたから。あれ?この子すごい買って帰るなーって。それであとで裏いったらないの。みんなが持って帰る弁当が。それで俺昨日休みだったから、小林に頼んで見といてって言ったんだよ。そしたら君昨日も全部持って帰ったっていうじゃない!ダメだよ!そんな一人で全部持って帰ったりしたら。」
A「…すみません。次からはもうしないです。だけど、それでいきなりクビっていうのは…。」
B「いや、それでね…、一つ聞きたいことがあるんだけど。ほんとにそれ全部売れ残り?全部がそれ売れ残ったやつ?いっとくけど、持って帰っていいの期限が切れてる弁当とかだけだからね?」
A「………。」
B「ちょっと見してもらっていい?(レジ袋を取り上げる)」
A「あ、ちょっと…。」
B「こんなにいっぱい入れて。(取り出しながら)弁当、弁当、弁当、弁当、弁当…。君どんだけ弁当持って帰るんだよ!一人で食べれるのこれ?弁当、弁当…、ほら!これ助六!期限明日までじゃん!」
A「いやでも、助六どうせ売れないですよ。」
B「売れる売れないとかじゃないんだよ!」
A「初日も昨日も売れ残ってましたし。」
B「わかんないだろ!今日は売れるかもしれないじゃん!」
A「なんで仕入れてるんですか?」
B「うるさいなあ。(レジ袋見ながら)スイーツもこんないっぱい持って帰って…、ほら!これ!これも期限まだまだじゃない!」
A「それも売れませんって。」
B「だから君が判断することじゃないんだよそれは!」
A「季節限定みたいですけど、秋に栗は定番が過ぎます。」
B「そんなのわからないでしょ。」
A「今の時代はかぼちゃです。」
B「君はマーケティングの人か何かか?(また、レジ袋から取り出す)それで、これは何?」
A「綾鷹です。」
B「売れ残らねーよ!」
A「期限が切れてまして。」
B「ありえねーよ。半年か1年は持つよ?こんな何本も。弁当に対してお茶をそろえたいのか知らないけど。綾鷹が期限切れるまで売れない店は!もう店として終わりです!ほら、全然期限切れてないじゃん!」
A「製造年月日を見間違えたんですかね?」
B「お前それで通用すると思うなよ?それで、これは何?」
A「アメリカンドッグです。」
B「レジ横いってるじゃん!レジ横の!これわざわざレジ横のケースから取ってきたの?やめてお客さんに見られたら恥ずかしい。」
A「ですが、これも大量に余ってて。絶対売れ残ると思ったから。」
B「そりゃ残るよ。君が自分で大量に揚げたんだから。」
A「……。」
A「びっくりしたーほんと。君の休憩時間。チキン切れてたから俺揚げようと思ったんだよ。それでフライヤー見たら、アメリカンドッグがびっしり!しかも2面とも!普通アメリカンドッグって挙げたら浮いてる状態なのに、入れずぎて底まで完全に埋まってたじゃん!」
A「……。」
B「いい!アメリカンドックを!フライヤーの体積目一杯使って揚げるんじゃねえよ!そしてそれを!休憩時間にやるんじゃねえよ!見てないと危ねえだろ!」
A「……。休憩時間でしたけど、ちゃんと揚がる頃には戻ってきましたよ…。」
B「それも見てたよ!それでケースにアメリカンドッグ入れて、入らない量のアメリカンドッグ入れて、それで君、休憩室に何本か持っていったよね!あれどうした?」
B「食べました。」
A「食うんじゃねえ!商品だぞあれ!」
B「ですがそれも売れ残ると思って。」
A「だからその売れ残りを作ったのは君だろ!何考えてるの!休憩時間とはいってもまだ勤務中だからね!勤務中にアメリカンドッグを3本4も本も食うんじゃねえ!アメリカのデブの休日かお前?」
B「………。」
A「ほらこれ。写真撮ったんだよ、ケースの。アメリカンドッグパンパンすぎて、隣の春巻きや焼き鳥のところも埋まってるじゃん。」
B「…ちょっと面白いですね。後でネットに挙げていいですか?」
A「ダメだよ!挙げるんじゃねえ!自分で作った画だろこれ!こういうのは客が偶然見つけて挙げるんだよ!店側の人間が挙げるんじゃねえ!」
B「……とにかく、今日は本当にすみませんでした。(袋から出したものを積めながら)もう2度とこんなことはしませんので。それじゃあ、お疲れ様です。(手にまたレジ袋を持つ)」
A「持って帰るんじゃねえよこの期に及んで!」
B「だけど…、家にはお腹を空かせた子ども達が待っているんです!」
A「…君、面接の時、一人暮らしだって言ってなかった?」
B「うち、犬を何匹か飼ってまして。」
A「犬かい!犬用に持って帰るんじゃねえ!人様の食べ物を!ドッグフードとかそういうのを与えとけばいいだろ。」
B「(休憩室を出ようとする)」
A「ドッグフードも売れ残ってねえよ?!何取りに行こうとしてるんだお前。買って帰れって言ってるんだよ。」
B「ホットドッグって、ドッグフードに入らないですかね?」
A「今日一で面白くねえよ。何だお前?それにまだだよ?まだ終わってないからこの話。」
B「まだって?」
A「リュックサック。君が今日来たとき、そんなパンパンの状態じゃなかったよね?」
B「………。」
A「それ、中見してみ。」
B「ちょっと待ってください。中には他に私物とかも入ってるんですよ?」
A「とかってなんだよとかって!私物オンリーのはずだろ。ほら、見せろ!」
B「(しぶしぶ差し出す。)」
A「(中を見る。)……マンガ雑誌。2冊。これも店のやつでしょ?」
B「サンデーとマガジンです。」
A「今日発売じゃねえか。」
B「今のご時世、漫画雑誌は売れ残りますって。」
A「だからそういうことじゃないって!せめて明日までは置いとかないと。」
B「特にサンデーは絶対残りますって。」
A「わからないだろそんなの。そもそも売れないからサンデーは2冊しか仕入れてないんだよ。そのうちの1冊を持って帰るんじゃない。」
B「いいじゃないですか。残り1冊あるんですから。」
A「その1冊は俺が買って帰るんだよ!やめて!残り1冊、お客さんに買って帰られたら俺違うコンビニ探さないといけなくなるから!」
B「…店長サンデー読んでるんですね。何読んでるんですか?」
A「話を変えようとするんじゃねえよ。」
B「僕はね、キングダムです。」
A「ヤンジャンじゃねーかバーカ。(また中を確認する。)メンズノンノも入れてんじゃねえよ。」
B「………あ、それは買いました。」
A「買うんじゃねーよ!てめえが!メンズノンノを!なんでこれだけ買うの!」
B「それは売れると思ったので。」
A「……………。(中を確認。)で、これは?」
B「トイレットペーパーです。」
A「……これ裸だけど。本当に店に並んでるやつ?」
B「いや、トイレの裏の棚に入ってたやつです。」
A「備品じゃねーか!何持って帰ろうとしてるんだよ!」
B「売れ残ると思って。」
A「売れ残るとかの位置づけにないだろ!これはもはや!もうダメだ。店の備品を私物化して持って帰ろうとするなんて、常識がなさすぎる。もう君絶対明日から来なくていいから。」
B「ちょっと待ってください。今回のことは反省してますから、クビだけはやめてください。」
A「クビだよクビ!もう決定だから!…ん?何、小林。どうした?え?!レジに入ってたお釣り用の棒金がない!?お前まさか…。」
B「………。」
A「いよいよだぞ。いよいよだぞお金は。これはもうれっきとした犯罪だからな。下手したら、警察呼ばないといけなくなるぞ。」
B「…え、あれって、釣り銭の売れ残りじゃないんですか?」
A「釣り銭にそんな概念ねーよ!!」