漫才 「団地での生活」

漫才 「団地での生活」
 
A「彼が3歳年下で、僕が2歳年下です。」
B「誰から見てなんでしょうか。○○○と申します。お願い致します。」
A「2歳上の姉から聞いたんだけど、団地で生活するのって大変らしいよ。」
B「さっきのお姉さんから見てだったんですね。」
A「団地って、やっぱりウワサ話とかが好きらしくて。ありもしないウワサ話とかも飛び交うから、住んでて疲れるらしい。」
B「へー。ちなみに俺、お前にお姉さんがいるって初めて聞いたんだけど。」
A「最近脳内で生まれたからね。」
B「ありもしない姉だった。でも確かに、ご近所づきあいとかもあったりしますし、団地で生活するのにいろいろ大変な面はあるかもしれませんね。」
A「(コント入る)あら、奥さん。ちょうど用があったのよ。買い物帰り?」
B「あら、どうも。」
A「ねえ、聞いた?なんかウワサで、これちょっと大きな声では言えないんだけど…。」
B「え?なに?(耳を貸す)」
A「(ヒソヒソ声で)来週ゴミの日が、月曜から火曜に変わるらしいのよ。」
B「ごめんこれヒソヒソで話すこと?期待したウワサと全然違うんだけど。」
A「なんでも業者の関係らしくて。ちなみにこの話知ってるの、私とあなただけだから。」
B「みんなに伝えたほうがよくない?こんなしょうもない情報戦で優位に立っても仕方ないわよ?」
A「しかも、いつもおひとり様1袋なのに、この日は2袋まで出せるのよ。」
B「ゴミ捨てにスーパーの卵みたいな方式を採用してるのね、この団地。」
A「主人が休みだから、一緒に出しにいってもらおうかしら。」
B「仲のいいことで。」
A「何?不満そうじゃない?」
B「そりゃそうよ。ウワサ話だと思ったらゴミの話だし。普通こういうのって、『何階の○○さんが浮気した』とかそういうのでしょ?」
A「あら、それなら私、浮気の話持ってるわよ。」
B「え?ほんとに?」
A「ほんとほんと。なんでも、私と同じ階に住んでる」
B「うん」
A「夫。」
B「夫?え?あなたの?」
A「浮気してるらしいのよー。不潔よねー。」
B「え?他人事みたいにいってるけど、あなたの夫よね?」
A「そうよ。」
B「さっきの仲のいいゴミ捨て夫婦はどこにいったの?」
A「しかも、その浮気相手が、最近都会から引っ越してきた、お隣の高橋さん。」
B「えー?ほんとにー?」
A「ほら、ちゃんと挨拶して。」
B「あ、今ほんとにお隣にいるのこれ?隣に住んでるとかじゃなく?」
A「こちら、高橋さん。」
B「どうもはじめまして。」
A「今日はあなたに紹介したくて、連れてきちゃった。」
B「やめてよ。あなたの夫の浮気相手でしょ?修羅場じゃない!こんなとこに私を巻き込んでほしくないんだけど…。」
A「万が一、顔が出そうになってたら、その時は止めてね。」
B「手が出そうになってたら止めるけど。なにあなた?顔が出るくらいの刑事事件この子に起こすつもりなの?絶対やめてよ。」
A「そんなことよりどう?せっかくだし何かこの子に聞いてみたい質問ある?」
B「この状況だったら興味が浮気一択なんだけど。いやでも…、初対面でそのことを聞くのはちょっと…。」
A「聞いちゃえ!聞いちゃえ!」
B「いやそんなこと言われても…。」
A「大丈夫。芸能記者とか、初対面でガンガン聞いてるじゃない。」
B「向こうはそれが仕事なのよ。私買い物帰りだからね?ゆっくり帰ってお茶とか飲みたいんだけど。」
A「ほら!思い切って!」
B「えー…。じゃあすいません、あの、なんで浮気とかしたんですか?」
A「あ、それ私も気になるー!」
B「あなたなんでさっきからそんな元気なの?言っとくけどあなたが明るくすればするほど私も向こうも怖いからね?」
A「で、理由は?え?『彼のことを愛してる』から?」
B「いやまあ、それはそうかもしれないけれど。それでもやっぱり人の男だし、正直よくないと思うよ。」
A「それにあんな男選ぶなんて、センスが狂ってるしね。」
B「あなたの夫よね?どういう心境で言ってるのそれは?」
A「だってー、あの人が部屋にいるだけでー、ホコリがどんどんたまるしー。」
B「あの人がいなくても部屋にホコリはたまるのよ。ホコリってそういうものなの。」
A「それにトイレに入ったり部屋を行き来したり、もうそういうのが気になって仕方がない。」
B「あなた決定的に共同生活が向いてのよ。夫の人柄全く関係ないんじゃない。なんで結婚できたの?」
A「うーん、愛されてるから?」
B「なんなのそれ。結局のろけじゃない。」
A「♪いいえ私は、さそり座の女。」
B「コロッケはいいのよ。普通に歌ったけど。変な顔なかったらただの美川憲一だからね。」
A「え?何?『私のほうが彼を愛してる。私のほうが彼を幸せにできる』ですって?」
B「高橋さんは高橋さんでめちゃくちゃ気が強いのね。すごい勇気。ふつうに尊敬するわ。」
A「カッチーン。今のはちょっと利き酒ならないわね。」
B「聞き捨てかなおそらく?あなた昼間からお酒のこと考えてるからこうなるのよ?」
A「黙って聞いてりゃ、あなた人の男を奪おうとしてるのよ?何様のつもりなの?この大泥棒ネコ!」
B「大泥棒って…。ホッツェンプロッツでしか聞かないんだけどその言葉。」
A「そこまで言われたら、私も大人しくできないわね…。じゃあもうわかった!ここは!クイズで!勝負よ!」
B「心配しないで高橋さん。私も今あなたと同じく混乱してる。ごめん、クイズってのは何?」
A「ここで私が夫に関するクイズを出題するわ。それに答えられたら大人しく、私は離婚して彼から身をひいてあげる。」
B「え?いいの?たぶん司法に出たらあなたが100%勝てる状態なのよ?」
A「そうね。でも私は負けない。」
B「いやだから勝てるのよ司法だと。話聞きなさいよ。」
A「ここは男らしく一問勝負。」
B「あなた今女よ?」
「しかも○×クイズでどうかしら?」
B「負けたらあなたにバツがつくのよ。本気で言ってるの?」
A「でも私が出す問題は彼と一緒に過ごしてきたからこそ知ってる超難問。先に言うと、あなたがこれをわかる可能性は、はっきり言って、0%ね。」
B「0%でも勘で50%正解するのが○×クイズなんだけど。ちょっと、一回落ち着きなさいって。」
A「あなたは口を挟まないで。これは私と彼女の問題なの。」
B「だったら最初から私を巻き込んでほしくなかったんだけど。ゆっくりお菓子食べたかったんだけど。時間なくなったじゃない。」
A「それじゃあさっそく出題するわ!第1問!デデン!」
B「ちょっとストップ。一問勝負よね?」
A「そうよ?」
B「ごめん、第1問とか言ったから。いきなり保険打ったのかと思って。」
A「もうあなたは黙って見てて!これは私と彼女の問題なの!クイズだけにね!」
B「わかった。今のも内心イラッとしたけど、ここは黙って見送るわ。」
A「それでは第1問!デデン!」
B「デデンはいるのね絶対。」
A「夫は平日は仕事で、休日はどこにも遊びにいかず寝てばっかり、まるで死んだような、ゴミみたいな生活を送っていますが、」
B「ひどい言われようね。あなたほんとは離婚したいんじゃない?」
A「では!来週のゴミの日は月曜日である!○か×か!」
B「夫全然関係ないじゃない!なんなのゴミの日って…。あれでも、そういえばさっき、ゴミの日は火曜日に変わったことヒソヒソ声で私に話してた。あの時隣には高橋さんもいたはず…。もしかして、それってこのため?」
A「さあどうする?○か×か。なんならギブアップでもいいのよ?」
B「このタイミングでギブアップは絶対ないと思うけど。」
A「え?『×』…?」
B「『×』って…。ちょっとダメじゃない!もしかして、さっきの話この子聞いてたんじゃ!」
A「ブッブー!残念!答えは『○』でしたー!」
B「……え?どういうこと?さっき火曜日に変わったって。」
A「ごめんね。あの話ウソなのよ。」
B「え?ウソ?」
A「高橋さんのような性格の悪い女、ヒソヒソ声で話したら絶対盗み聞きすると思った。だからワザと聞こえるくらいのヒソヒソ声でしゃべったのよ。どう、すごいでしょ。私のこの見通し力。」
B「いや、すごくないわよ。私あなたのせいで火曜にゴミ捨てるとこだったじゃない。」
A「ごめんごめん、でも騙すなら味方からってよく言うし。それに俺、漫才の冒頭でちゃんと言ったよね?」
B「私口調がまだ戻ってないんだけど。急に漫才に戻るの止めてもらえない?え?ごめん。最初に何か言ってたっけ?」
A「ちゃんと言ったよ。団地では、ありもしないウワサ話が飛び交うって。」
B「言ってたけども。団地の生活って疲れますね。やめさせていただきます。ありがとうございました。」