漫才 「ペンション殺人事件」

漫才 「ペンション殺人事件」
 
A「どーもー。○○○と申します。よろしくお願い致します。がんばっていきましょうか。」
B「『コント ペンション殺人事件』」
A「心配しないでください漫才ですよ。やめてください、マイクをまやかしの存在にするのは。」
B「そんなに部屋の扉を叩いて、どうされたんですか?」
A「続けるみたいです。探偵さん。実は、親友のたかしが部屋から出てこなくて。さっきからドアを叩いてるんですが、返事がないんです。」
B「なんだって!?ドンドンドン!親友!ドンドンドン!おい!親友!ドンドン!返事をしろ!親友!」
A「あなたのじゃないですよ?僕さっき名前言いましたよね?普通に呼んでください。」
B「ダメだ…返事がない…。なんだか嫌な予感がします。この部屋の鍵穴は?」
A「鍵穴は固定なんでそこですけど…。ですが、鍵はたかしが持ってるので、部屋の中には…。」
B「くっ!こうなったら手荒になりますが…、少し下がっていてください。」
A「助走をつけて…、まさか!部屋の扉を突き破る気では――」
B「シュンッ!」
A「通り抜けましたね!?」
B「カチャッ!(内側から開ける。) 開きました。」
A「どうやったんですか??ありえないことが起きたんですけど??」
B「そんなことより、今はあちらのほうを。」
A「なっ…!(倒れてるたかしに駆け寄る)たかし!たかし!!」
B「むね肉を刃物で一突き…。」
A「たかし!しっかりしろ!たかし!!」
B「(腕時計を見て)時刻は…?ダメだ…。半年前に壊したんだった…。
A「たかし!なんでなんだよ!!たかし!!」
B「くっ…!お涙頂戴の場面だ……!」
A「うるさいなあさっきから!いいからさっさと救急車を呼んでください!!」
B「いいえ、残念ではありますが、鼓動は止まっていますし、瞳孔は開孔、どうしようもないこの状況では救急隊員も立ち往生。」
A「なんで韻踏んでるんですか?」
B「ここは、警察、葬儀屋、葬儀に出席するであろう親戚、あと葬儀にはお寿司が必要なので銀のさらに予約の連絡を。」
A「先を見通し過ぎでは!?くそっ!たかし…!どうしてたかしが殺されなきゃいけないんだ……!なんでなんだよ………!!たかし………!!」
B「……バカ野郎っ!!パンッ!(Aの頬を殴る)
A「痛っ!ええっ!?なんで!?」
B「いいですか!そうやって落ち込んでても、たかしさんは喜びませんよ!確かに…、気持ちが辛いのはわかります…。ですが!ここは犯人を突き止めて!この死を乗り越えないと!僕たちは!先に進めないんだ!!」
A「気持ちが前に向きすぎでは!?ついさっきですよ!遺体発見したの!」
A「なんなんですかあなた??」
B「とにかく、今はこの事件を解決できるよう捜査に協力してください。被害者は親友のたかしさん。死因はおそらく、ハツに刺さっているこの包丁でしょう。」
A「ハツって。あなたさっきもむね肉とか言ってましたけど、食料として見てませんか?」
B「何か手がかりとなるもの……、ハッ!遺体の近くに落ちている赤い液体…、これは…、(ぺろっ)血!?」
A「見たらわかるでしょ。白い粉とかでやるんですよそういうのは。」
B「ぺろっ、ぺろぺろっ」
A「舐め続けないで!止めて食欲!」
B「ですがたかしさんの指のところを見てください。何か血で、文字みたいのが書かれています。」
A「ほんとだ…。これってもしかして、ダイイングメッセージ!?」
B「まあ今となってはほとんど読めませんが。」
A「舐めすぎなんですよ!何やってるんですか!」
B「迷宮入りに一歩近づきました。」
A「解決に近づけましょうよ!」
B「そして、さらにもう一つ事件を迷宮入りに近づける要素があります。この部屋の窓はすべて閉まっていますし、部屋のドアには私が入るまで鍵がかかっていました。出入り口となりそうな所は他にありません。」
A「え…?ということはまさか…。」
B「はい。実質殺人です。」
A「わかってますよ?だから犯人探してるんでしょ?密室殺人なんですよね?」
B「その通りです。」
A「くそっ!せめて、いつ殺されたかだけでもわかれば…。」
B「それなら昨日の夜12時くらいだと思います。」
A「わかるんですか?」
B「はい。私、結構長いこと探偵をやっていましてね。200万件の殺人事件を解決した今、遺体を一目見ただけで、その人がいつ殺されたのかわかるようになったんです。」
A「なるほど…。さらっと栃木県の人口と同じ数だけ人が殺されてたことに衝撃を隠せませんが…。」
B「では、まずはその時間にアリバイがなかったか、この部屋にいる一人ずつに聞いていきましょう。まずはあなたから。」
A「一人ずつって、今僕しかいないんですけど。」
B「特にあなたは念入りに聞かないと。こういう時、第一発見者が一番怪しい、って言いますからね。」
A「一応言っときますけど、あなたもですからね?」
B「では、さっそくお聞きします。昨日の晩ごはんは何を?」
A「脳トレなのこれ?昨日の晩は、それこそたかしと晩ごはんを食べてて、その後部屋に戻りました。夜10時くらいです。そのあとは昨日はなんだか疲れてしまって、すぐに部屋で寝てしまいました。」
B「なるほど。それを証明する印鑑は?」
A「ないですよそんなの!部屋には妻もいましたし、一緒に寝ていたのでそれが証明にはなるかと。」
B「ちなみに?奥さんは今どこに?」
A「具合が悪いらしくて、今もベッドの上で寝ています。」
B「なるほど。よくわかりました。つまり、たかしさんの命が失わていく中、あなたたちは新しい命を作っていたと。そういうことですね?」            
A「違いますよ!?なんか寝てるの意味、ものすごい誤解してません!?」
B「まあその辺のことは奥さんに聞けばわかることです。奥さんの上の口は、正直ですからね。(キリッ)
A「はっ倒しますよ!言っときますけど、親友が殺された今、そんなに精神安定してないですからね!!何顔作ってるんですか!!」
B「ちなみに私はずっとロビーで一人くつろいでいました。」
A「アリバイないじゃないですか!」
B「それを証明する印鑑です。」
A「わざわざ意味のない証明をどうも。ですが、こうなるとペンションにいる人全員に聞かないといけないですね。」
B「いいえ、犯人はもうわかっています。」
A「早っ!?ええ??今ので??」
B「はい。あなたの親友である、たかしさんを殺した犯人…。それは、床(とこ)の中にいる!」
A「この中ではなく!?床の中って…。まさかあなた、寝ている妻を疑ってるんじゃ…?」
B「その通りです。」
A「ふざけるな!そんなわけないでしょ!」
B「ちょっと落ち着いてください!」
A「妻を疑われて怒らないわけがないでしょ!なんでですか!一体何を根拠にそんなこと言ってるんですか!?」
B「…実は昨日の夜中、顔色が悪い奥さんがロビーに来ましてね、その時に、自分から殺したと言っていました。」
A「確定じゃねえか!え、なんなのそれ??」
B「だから言ったでしょ。奥さんの上の口は正直だと。」
A「あれそういう意味だったんですか!?」
B「とにかく、これで事件は解決しました。」
A「さっきの捜査は何だったんですか?茶番??」
B「ですが、まだ一つだけ、私にも解けてない謎があります。」
A「もともと解けてたんですけど…。でもまあそうですね。」
B「一体なぜ、奥さんはあなたの親友であるたかしさんを殺したのか…。」
A「密室のトリックは!!!!??」
B「…はい??」
A「密室は!!どうやって!!!なぜ!?わざわざ!!密室まで作ったのに!!!あっさり自白しちゃったの!!!???」
B「ああ、あの密室は私がやりました。」
A「はあ???」
B「最初に部屋を通り抜けてたじゃないですか。あれで私が、あの部屋を密室に作り上げたんです。」
A「え?なんで??」
B「さあ!ここであなたに一つ謎をお渡ししましょう!!一体なぜ!私が!そんな!事件を!かく乱することを!急に!しでしかしたのでしょ~か!?」
A「急にどうしたんですか!?」
B「さあ!あなたにわっかるかなああああ!??」
A「情緒どうなってるんですか?」
B「わかりませんかあああああ?わからないでしょおおおおお!?」
A「怖い…!人殺しより怖い…!まさか…、私の妻が美人だったから、それで助けて少しでも気を引こうと!」
B「はあ?うっせえ!黙れよブス女が!!」                    
A「いない人の悪口を違う人に…!やめろ!妻を悪く言うのは!!」
B「おまえの奥さん、ひーとごーろし!!」
A「なんてこった…!反論ができない…!」
B「正解はですね、少しでも犯人の気持ちを理解したいんですよ。」
A「はい??」
B「200万件解決しても未だに理解できないんですよ、犯人の気持ちが。ですがわざわざ理解のために自分で殺人を犯すのはあまりにもバカげている。だから、こうやって少しでも殺人現場を荒らして、犯人の気持ちを理解しようと、日々こうやって努力しているんです。」
A「言ってることがまるでわからない…!!」
B「私を捕まえてみますかあ!無理ですよねえ!私は殺してないですからねえ!!」
A「なんなんだよこいつ!!ちょっと待って!!ちゃんとやれよ!!」
B「はい?」
A「せっかくこの前見たドラマの探偵がかっこよかったからやりたいって話だったのに、全然かっこよくないよ!ちゃんとやらないと、お客さんも見てくれないからね??」
B「え?ごめん…。俺一言もかっこいいから探偵やりたいなんて言ってないんだけど…。」
A「あ、ごめん…。コントのつもりだったんだよね?やめさせてもらいます。ありがとうございました。」