コント 「カラオケのフロント」

3年前書いたものをリメイクしました。

A「いらっしゃいませ」
B「すいません一人で」
A「おひとり様で。かしこまりました。すいませんお客様ただいま部屋のほうが満室になっておりまして」
B「あっ、そうなんですか?」
A「相部屋という形になるんですけれどよろしいでしょうか?」
B「ダメですね」
A「今ですとカップル2人の部屋にぶちこむ形に」
B「よりによってじゃないですか。あの、待ちますんで」
A「待っていただけます?」
B「どれくらいかかりますかね?」
A「そうですねこの時間帯ですと30150円という形でやらしていただいてるんですけど」
B「いやあの、お金じゃなくて」
A「え?」
B「時間」
A「7時50分です」
B「今の時間じゃなくて。あの、待ち時間教えていただけます?」
A「あーはい。えーと、そちらですとだいたい5分くらい待っていただければ」
B「あっ、思ってたより早いですね」
A「よろしいですか?」
B「はい」
A「かしこまりました。ではすいません先にこちらの紙にですね、氏名・年齢・電話番号・コードネームのほう書いていただいてよろしいでしょうか?」
B「コードネーム?」
A「はい?」
B「コードネームいります?」
A「部屋が空き次第そちらのほうでお呼びさせていただきますので」
B「名前でよくないですか?」
A「呼ぶとき周りにあまり知られたくないなーっていう方もおられますし」
B「そんな個人情報に厳しい人います?それにコードネームとか僕ないですし」
A「その場合は空欄にしていただければ、こちらのほうで勝手に決めさせていただきます」
B「それでいいんですか?」
A「はい」
B「はい、じゃあこれ書きました」
A「ありがとうございます。えーっと、相崎様ですね」
B「はい」
A「本名で?」
B「本名ですよ。本名書くでしょそりゃ」
A「へー『相崎』。初めて知りました」
B「でしょうね」
A「わたくし、川島と申します」
B「川島さん」
A「初めて言いました」
B「はい。なんですかこの時間?」
A「ではすいません。そちらにおかけになってお待ちください。あ、あとすいませんただいまアンケートをやっておりまして」
B「アンケート?」
A「はいこちらなんですけれども(紙渡す)。本日ご利用していただいた感想や要望などをお客様に書いていただいてまして、それを参考に日々店の改善などしていますので、もしよろしければ今お時間ありますし、お書きになってお待ちください」
B「まだ利用してないですけどね」
A「はい?」
B「まだ利用してないんで。何の意味もないデータになりますけど」
A「それはそれで構いませんので」
B「いいんですかね?」
A「はいおかけになってお待ちください」
B(席座る)
A「(別の客が来て)すみませんご利用ありがとうございます。そちらお預かりいたします」
B(違うほう見ながら待つ)
A「えー、本日お会計のほうがですね。38200円になります」
B「何泊したの?」
A「4万円からで」
B「何泊したのあの客?」
A「すいませんこちらお返しになります。ご利用ありがとうございましたー」
B「………」
A「すいません。大変長らくお待たせいたしました。一名でお待ちの『ハゲデブ』様。」
B「………」
A「『ハゲデブ』様ー」
B「………」
A「(Bのほうに寄って)あの?『ハゲデブ』様?」
B「僕のことですか!?」
A「はい。あの、コードネームで」
B「ただの悪口じゃないですか。そして別にハゲても太ってもないし。せめてこうメガネかけてるから『メガネ』とかにしましょうよ」
A「………『ハゲメガネデブ』?」
B「僕のことどう見えてます?正直絶対名前でいいと思いますよ」
A「なるほど。かしこまりました。すいませんおそらく忘れるのでアンケートに書いておいてください」
B「なめてませんなんか?」
A「気のせいだって」
B「なんでタメ口になるの?」
A「それでは気を取り直して」
B「気を取り直して?」
A「本日1名様で」
B「はい」
A「機種はどうされますか?」
B「DAMで」
A「すいませんお客様、先ほど空いた部屋のJOY SOUNDしかないんですけれども」
B「なんで聞いたんだよ。じゃあそれでいいです」
A「JOY SOUNDで。メールクーポンなどはお持ちでしょうか」
B「いえ」
A「お客様、ただいまメール会員に入っていただくとですね、今日から使えるクーポンがもらえまして、なんとそのクーポンを使うと、サービスで採点の点数が30点プラスされて表示されるんですけれど」
B「いらないですよ。ふつう割引とかでしょ」
A「いつもより高めに出ますよ」
B「計算しちゃうでしょ絶対」
A「ではクーポンなしでいかせていただきます。本日ご利用時間はどうなさいますか?」
B「2時間で」
A「2時間。最初何歌われます?」
B「はい?」
A「最初何歌われますか?」
B「いや、それ言わないと駄目ですか?別に人が何歌おうが勝手でしょそんなの」
A「申し訳ございませんお客様。当店曲を入力する機械が全てフロントのほうにございまして」
B「なにしてんの!?」
A「受付ですべて入力してますので、教えていただかないと何も歌っていただけないんですけれど」
B「なんですか、そのシステム?えーマジで?」
A「はい。各部屋のモニターとすべて有線でつないでおります」
B「配線がやばすぎるでしょそれ」
A「タコ足配線ぐっちゃぐっちゃです」
B「えーマジか…今まで文句とか出ませんでした?」
A「めちゃめちゃ言われますね」
B「そりゃそうでしょ」
A「店ができた当初からアンケートで毎回書かれてます」
B「全然改善してないじゃないですか」
A「とりあえずお客様曲はどうされますか?」
B「えーどうしよう…」
A「なければ勝手にランダムで曲入れましょうか?」
B「困ります。なんでそっちでちょいちょい勝手に決めるんですか」
A「何歌われます?」
B「えー、じゃあとりあえず『さくらんぼ』」
A「『さくらんぼ』?」
B「『さくらんぼ』?知らないですか?」
A「ちょっと…」
B「有名ですよ?大塚愛の」
A「すいません一度歌っていただいてもよろしいですか?」
B「なんでフロントで歌わないといけないんですか!部屋で歌いたいんですよボクは」
A「お願いします」  
B「えー…だから『♪笑顔咲ク~ 君と つながってたい』」
A「……」
B「『♪もしあのむこうに 見えるものがあるなら 愛します』」
A「あー思い出しました」
AB「『♪ふーたーり 幸せの空』」
B「そう!」
A「『♪照れくさくて あなたの 肩にラリアット』」
B「違います」
A「『もう1回!』」
B「もう一回じゃないんですよ。ドMな彼がラリアット要求しないんですよもう1回」
A「思い出したんで入れときますね。もう一曲入れときます?」
B「もう一曲?」
A「面倒だと思うのでまとめて。いや別に嫌じゃなればいちいち来られてもいいですけど」
B「いちいちて。そっちがそうなるんようにしてるんですからね?」
A「どうされます」
B「えーと、じゃあ『壊れかけのRadio』」
A「あーはい、知ってます」
B「知ってます?」
A「♪『思春期に 少年から 大人に変わる』」
B「そうそうそれです」
A「♪『ほんとの幸せ おしーえーてーよ あーたしさくらんぼ』」
B「混ざってます。混ざってますから」
A「あれ?」
B「混ざってるし『さくらんぼ』も知ってるじゃないですか」
A「ま、とりあえず2曲いれときますね」
B「あのすいません」
A「はい?」
B「あのー、めんどくさいんで、この店。やっぱキャンセルしてもいいですか?普通の店行きますんで」
A「めんどくさいって。このシステムで7日間がんばったお客様もおられますよ?」
B「さっきの客!7日もいる時点で頭おかしいですからそれは例外で認識してください」
A「かしこまりました。ではアンケートのほうだけ出していただいて」
B「本当に参考にします?」
A「モッチーです」
B「とりあえず今のも含めて『不満』って書いときます」
A「はい、では、本日は大変申し訳ございませんでした。もしよろしければまたのご利用お待ちしておりますありがとうございました」
B「はい。なんだこの店。むちゃくちゃだし。絶対客こないだろ」
A「お客様、つい先ほどまで満室でした」
B「そういえば確かにそうでしたね」