漫才 「バス」

気分的に久々に


A「どーも、お願い致します」
B「個人的な話になるんですけど」
A「はいはい」
B「僕、すごいバスが苦手で」
A「あーまあすぐバス酔いする人とか確かにいますよね」
B「そうじゃなくて乗り降り」
A「乗り降り?」
B「んー、なんていうのかな。路線バスとかさ、どこで乗ってどこで降りていいのかがよくわかんないんだよね」
A「いや、最寄りの駅で乗って、目的の駅で降りればいいと思うんだけど…。なに一つ難しい要素がないんだけど…」
B「いやでも乗るタイミングとかもよくわかんないしさ」
A「タイミングって…、別にバス止まるじゃないですか」
B「はい?」
A「いやだから止まるじゃないですか」
B「?」
A「止まるじゃん」
B「…信号?」
A「あっ、違う」
B「たまにね」
A「いやごめん」
B「たまに止まったりはしますけど」
A「そうじゃなくて。駅で」
B「ん?」
A「駅で」
B「??」
A「バス停」
B「??? ………あー!はいはいバス停ね!バス停!確かに止まる!」
A「え?そんなピンとこないもんなの?」
B「確かに止まる。あっ、だからそうか!バス停で止まってる時に乗って、バス停で止まってる時に降りればいいのか!あーなるほど!」
A「ごめん今までどうでしたの?」
B「なんかすごいイメージついたわ、ありがとう」
A「あ、いや、どういたしまして」
B「ほんとありがと。いや、でもごめん。すごいイメージはついたんだけど、まだちょっと乗り降りできる自信ないから、1回練習させてもらっていい?」
A「練習?」
B「練習」
A「えーとそれはバス運転してきたらいいの?」
B「うん、それに対して乗り降りの練習するから」
 
A「はいじゃあバス運転してます。ブーン」
B(手をあげて軽くピョンピョン飛ぶ)
A「別に呼ばなくても止まるから。キーッ。」
A「で、止まったから乗ります」
B(バスに乗る)
B(中を通ってバスを降りる)
A「で、止まってるから降ります。乗った駅で降りたやん。なにしてんの?」
B「え?」
A「なにしてんの?何一つ移動してないけど。そんな大縄的感覚で乗り降りされても」
B「?」
A「違う!だから止まったから乗ります」
B(バスに乗る)
A「で、出発します」
B「あっ、よかったらこの席どうぞ」
A「まあ席を譲ることもあるでしょう」
B(一歩下がって座る)
A「後ろの席座ったやん。譲る意味あったのそれ?」
B「…」
A「で、目的の駅に着きます。キーッ。止まりました。」
B(立って、出口のほうに行く)
A「で、降ります」
B「あのー、すいません」
A「はい?」
B「すいませんあの…、ボタンを、押そうと思ったんですけど、他の降りる人がちょっと先に押しちゃって、僕押すことができなかったんですけど、一緒に降りちゃって大丈夫ですかね?」
A「大丈夫です。そういうシステムなんで」
B「あ、じゃあ降ります」
A「はい。で、降ります。あー、お金お金!」
B「はい?」
A「お金。運賃箱に入れないと」
B「いやでも持ってないですよ」
A「持ってないの?」
B「持ってないです。えーと、どうしましょう。右眼差し出します?」
A「いらないです。持て余しますんで。たかが200円くらいですのでほしいの」
B「あっ、じゃあ麦チョコなら今持ってますんで、それ入れときますね」
B (袋の麦チョコ、開けてひっくり返して入れる)
A「やめてください、つまりますんで。なんでそんな隙間に入ったら掃除しにくそうなものを」
B「……」
A「えっ、ほんとに持ってないですかお金?」
B「持ってないです。実家にはあります」
A「それはあるかもしれないですけど」
B「ひくほどあります」
A「お金持ちかはどうかは知らないですけど」
B「あっ、じゃあこうしましょう。僕いま時間ありますし、実家もそんなここから遠くないんで、一回実家に寄って、それからここに戻ってくる形で」
A「タクシーじゃないんですよこれ。無理ですよ。他のお客様もいらっしゃいますし」
B「あ、でも、これくらいの人数なら招待できますよ?」
A「家が広いとかは知らないんですよ」
B「バスパーティーですね」
A「バスパーティー??」
B「バスパーティー。今日。よろしければ呑んでいかれます?」
A「勤務中ですので。運転してるので。いろいろ問題になりますから」
 
A「ごめん、思ってたよりもできてないわ」
B「あれー?」
A「なかなかにひどい」
B「うーんやっぱりバス苦手っぽいね。」
A「そう…」
B「まあじゃあしょうがない。当分はバス乗らないようにするよ」
A「それ、不便じゃないの?」
B「うーん不便だけど、まあしばらくはリムジンとかで送ってもらうようにするし我慢しとくよ」
A「いや、金持ちええねんもうええわ。ありがとうございました」