コント「部活やめんなよ」
(B 板付き 上手のほうに立っている)
(SE「もう1曲遊べるドン!」)
(A 下手から出てくる Bを探し見つける)
A「なにやってんだよお前…。練習来ないと思ったらこんなとこで…。似合わねえよ、お前にゲーセンなんて…。」
B「…………。」
A「今年こそチーム一丸となってみんなで甲子園目指すって、そう約束したじゃん。そのためにはエースで4番のお前の力が絶対必要なんだよ。それが何?肩を痛めたかもしれない?このままだと思う通りのプレイができなくなるからやめる?お前そんなんで簡単に夢諦めんのかよ!」
B「別に諦めてませんよ…。」
A「諦めてないって…。いいかお前は天才なんだよ?1年生にして、投げれば三振の山、打てばホームラン。世間からは第二の大谷と呼ばれてるし、全国から注目されてる。スカウトだってみんなお前のことを見に来てるし、間違いなくプロになれるんだよお前は!そりゃ去年は俺達先輩の力が不甲斐なくて甲子園いけなかったけど、だからこそ今年こそチーム一丸となってみんなでがんばってきたじゃん!」
B「…………。」
A「お前が変えたんだよこのチームを!毎日土日も休みなく練習して、疲弊しながらやってた俺たちを、こうやったら効率よく練習できるんじゃないですか?って、俺たちに提案して、そりゃ後輩の言うことだから当初は反発してた人もいたけど、それでもお前という存在がいたから、みんな甲子園いけること信じて、ここまで一生懸命やってきたんだよ!それをなんで、なんでそんな簡単に部活やめるなんて言うんだよ!」
B「うるさいなあ、もうほっといてくださいよ!(後ろを叩く)」
A「ほっとけるわけないだろ!!みんな知ってんだよ…!お前、バイトしてるんだろ?」
(Greeeenのキセキが流れる)
B「お前、父親がいないから…。そりゃ、学費とかお金の問題は俺達にはどうすることもできないかもしれないけど…、でも俺達にできることは手伝うし、周りの大人にも相談する…。だから、だからお前、部活止めんなよ!」
(キセキ、Aメロに入る)
(同時に太鼓の達人の叩く音が入る B太鼓を叩く)
(A唖然として見る)
A「……………。」
(キセキ、Bメロに入る 太鼓を叩く音が加速するB動作激しくなる)
(Aちょっとずつ怒った表情に)
(SE「50コンボ!」)
A「……………。」
(キセキ、サビに入る 太鼓を叩く音がMAXに Bの動作もさらに激しく)
(SE「100コンボ!」)
(SE「200コンボ!」)
(キセキ、サビ終わる。)
(SE「フルコンボ!」)
A「叩いてんじゃねえよ!!!!!!!人が!!説得をしてるときにノーミスで!!!!叩くんじゃねえ!!!!!!」
(SE「成績発表!」)
A「違う!太鼓のことはどうでもいいんだよ!とにかくいいからお前、部活に、戻ってこい!!」
(SE「ノルマクリア失敗…」)
A「なん!!でや!!ねん!!!!ノーミスだろうがてめえ!!!ふざけやがって、壊れてんのかこの機械!!!!(機械に向かって怒る)」
B「あ、違います違います先輩。あの、太鼓の達人って、判定が優・良・可の3段階あって、全部一番低い可の状態で叩くと、フルコンボをしながらノルマクリア失敗させることが可能なんです。」
A「お前めちゃくちゃやりこんでんじゃねえか!!あんまよくわかってないけど!たぶん普通のフルコンボより難しいことしてるだろそれ!!」
B「…………。」
A「そんなことはどうでもいいんだよお前!いいからお前!部活に戻ってこい!」
B「嫌です。」
A「戻ってこい!」
B「戻りません!」
A「そしてお前戻ってこない奴が!!!Greeeenのキセキなんて曲を選ぶんじゃねえ!!!戻る奴の曲だろうがてめえ!!!!!!」
B「…………。」
A「大体、なんでそんな上手いんだよ…。」
B「練習してたんで、俺。」
A「練習?」
B「俺、部活終わった後、毎日毎日店閉めるまで太鼓の達人練習してたんです。それで、頑張ってここまでこれだけ上手くなりました。」
A「野球の練習しろバーカ。何やってんだお前。時間無駄にしやがって。そうやって毎日毎日肩動かしてるから変に肩痛めたりするんじゃねえかお前これで肩痛めてんじゃねえか!!何やってんだマジで!!!」
B「俺、プロゲーマーになるのが夢なんです。」
A「は?プロゲーマー?」
B「俺、プロゲーマーになるのが夢で。太鼓の達人もe-sportsがあるし。それで毎日こうやって練習してたんです。でもこのまま野球もやってると、肩の使いすぎで思う通りの太鼓のプレイができなくなる…。だから俺、野球やめます!」
A「誰が野球のほうをやめるんだよお前!!ゲームのほう取るんじゃねえ!!なあ考え直せって!お前にとって野球は何なんだよ!?」
B「野球は…、ただの趣味です。」
A「趣味?!第二の大谷と呼ばれたお前の野球が、趣味?!全国の高校球児が泣くぞお前。」
B「趣味だったんですけど、先輩たちみんな馬鹿みたいに練習時間長かったんで。ゲームする時間なくなっちゃうと思って、それでできるだけ効率のいい練習になるように先輩たちに提案をしました。」
A「俺たちは何に動かされていたんだ…。」
B「効率化はゲームの基本中の基本ですからね。シミュレーションのいい練習になりました。」
A「こいつ、ゲームのことしか考えてねえ。なあ、頼むから戻って来いよ…。考え直せって。」
B「考え直すって…。プロゲーマーは僕の夢なんですよ?先輩に僕の夢を否定する権利があるんですか?」
A「それは…、確かにそうかもしれないけど…。」
B「大体先輩はゲームのことを軽く見すぎです。今はe-sportsとしてゲームもスポーツ化されてますし、市場は年々大きくなっています。その中で世界的に活躍してる人だっているんです。確かに国内ではまだ理解していない人も多いですし、一部のゲーマーの素行の問題とかもあって、悪い印象を持ってる人がまだまだいるのも現実です。だからこそ俺決めたんです。俺がプロゲーマーになって、もっともっとゲームをうまくなる。そしてみんなにゲームの楽しさを伝えて、俺が!この業界を変えてみせる!!」
A「こいつめちゃくちゃ熱い奴だ!なのになんで…!なんでその熱を野球のほうに向けてくれなかったんだ!!」
B「一人の野球をやっている高校生が、趣味で休みの時間はゲームをしていた。だけどプロになるって決めたから、ゲームをする時間がもったいないからやめて、野球に一筋に打ち込む。俺はそれの!ゲームと野球が逆なだけです!それがそんなに悪いことなんですか!?」
A「いや、まあ確かにそうかもしれないけれど…。大体お前、そんな簡単にプロになれるわけないだろ!」
B「先輩言いましたよね?お前なら間違いなくプロになれるって。野球でできるのにゲームのほうはなれないって言うのおかしくないですか?それとも野球ってもしかしてゲームよりめちゃくちゃ簡単なんですか?」
A「ダメだ、俺これ完全に負けかけてるなあ!」
B「では、そういうことなんで。(去ろうとする。)」
A「ちょっと待て!どこ行くんだよお前!」
B「バイトです。バイトしないと。ゲームをするのにも1プレイお金がかかるんで。」
A「学費のためじゃなかった…!!あれだけみんなで心配してたのに…!全然ゲームのためだった…!!」
B「俺、決めてるんです。ゲームにかかるお金は全部自分で出すって。俺の勝手な夢で、母親に迷惑かけられないんで。」
A「だけどめちゃくちゃ理由がしっかりしている……!!めちゃくちゃ大人だ……!!」
B「先輩の使ってる、グローブ、バット、それって、親に買ってもらったものじゃないですか?」
A「くそがああああああ!!!!(膝から崩れ落ちる)」
B「では、そういうことなんで。」
A「待てよ…。だったら俺とゲームで勝負しろよ。」
B「はい、勝負?」
A「プロゲーマーになるなら、俺くらい簡単に倒せるだろ!だったらこの太鼓の達人で勝負しろよ。(バチを手に取る)そうじゃないと納得がいかん!」
B「先輩……、バチ左右逆です。」
A「うるせえ!とにかく今から勝負だ!絶対認めないからな!」
(暗転)
(SE ノルマクリア失敗、ノルマクリア失敗、ノルマクリア失敗…(繰り返し))
(明転)
A「壊れてんのかこの機械!!」
B「下手すぎて壊す人、初めて見ました。」